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転勤がない会社に勤めていたはずの夫が、突然転勤族になった話

転勤辞令は突然やってくる

「パパが、てんきんになりませんように」
家族出かけたレストランに飾られていた七夕飾りの短冊に、10歳と6歳の娘たちが書いた切実な願いごと。

ちょうどその2週間ほど前だったと思う、「転勤になったらどうする?」と夫が聞いてきたのは。またいつものアレか。2年前に本社の営業部に配属になってから、転勤シーズンの度に聞かれる質問。私は、いつもと同じように「一緒に行くよ」と軽い気持ちで答えたのだけれど、今回はこれまでと少し様子が違っていた。

それから数日おきに、「転勤になったらどうしようか」「上司から、そろそろ転勤どうって聞かれた」「部長に転勤の話された」と、夫の口からしつこく‟転勤”という言葉が発せられたのだ。

もしかしたら、今回は本当なのかも……。そして、七夕を待たずして、娘の願いごとは七夕さまに届かなかったことが判明する。8月の末に仙台へ転勤することが確定した。

転勤により手放した大切なもの

わが家にとって、転勤は晴天の霹靂。そもそも転勤のない会社に勤めていたはずだったのだから。衝撃を受けたのは、子供たちよりも、むしろ私の方だったかもしれない。社宅があるという理由だけで、なんの縁もない東京の下町、足立区に住まいを移し8年。転勤するなど夢にも思わなかったからマンションも買い、自分たちが暮らしやすいように、少しずつ手を加えながら、居心地の良い住まいに育ててきた。

住まいだけでなく、年月をかけて人とのつながりも育ててきた。7年間続けてきた地域のボランティア活動や長女が2歳のときから続けている親子サークル、マンションの住人、近所の子供たち、行きつけの店の店主さん、公園友達。困ったことがあれば、いつでも助けてくれる友人たちにも恵まれ、子育てがしやすく、人の温かみが感じられるこの町が、私は大好きだった。足立区という土地での人生ゲームで順調に駒を進めてきたところに、突然、空から大きな手が伸びてきて、「次は仙台盤で遊ぼうか」と、ひょいと私たち家族の乗った車を持ち上げた。そして、あっという間に仙台盤のスタートに置かれてしまった、そんな気分だった。

転勤前の特別な夏休み

夏休みに入ると、引っ越しまでの毎日が非日常の連続で、子供たちにとっては特別な夏休みになった。地域の友人、知人が本当にたくさん私たちに会いに来てくれた。子供たちも、毎日のように遅くまで友達と遊び、一緒にご飯を食べることも多かった。

そうした非日常の中に、地域の行事や、庭でのプール遊び、親子サークルの活動など、毎年恒例の夏のお楽しみを織り交ぜながら夏は過ぎた。そして、夏の締めくくりとなる西新井大師の納涼盆踊りを、目に涙をいっぱいためながら見納めて、いよいよ引っ越しの日がやってきた。

引っ越しトラックが到着し、手荷物を持ちマンションのエントランスに出ると、近所の子供たちやお母さんたちが、次から次へと見送りに集まってくれた。「元気でね」「遊びに来てね、待ってるよ!」寂しさを胸いっぱいに抱え、私たちは新しい暮らしを始めるために、仙台へと向かった。

引っ越しの寂しさは続く

私の周りには、仙台に縁のある人が多く、仙台への転勤が決まったと話すと、みな口をそろえて「仙台は暮らしやすいところだよ」と教えてくれた。けれど、新しい生活へに期待に胸を膨らます余裕はなく、引っ越し後はあわただしく幼稚園や学校が始まり、日常を整えることに精いっぱいだった。

幼稚園や学校から帰ってきても、近所に遊べる友達がいないため、毎日暇を持て余す子供たち。「足立だったら、近所に友達がたくさんいたのにな……」仙台にはなくて、足立にはあるものばかりが目についた。「足立に帰りたい」と泣きながら夫にこぼした日もあった。もうゲームの駒は仙台盤に移ったのに、駒の進みは遅く、足立ロスはしばらく続く。

それでも月日が経つうちに、足立では見られなかった美しい山並みを借景とする暮らしに、徐々に心が緩んできた。仙台に越してきて車を手に入れたあたりから、駒の進みが早くなったように思う。週末になると、車で少し遠出をするようになった。20分も行けば温泉や山があり、そんな暮らしに幸せを感じた。

もう東京に戻りたくないと思った日

仙台は東北一の都会で、仙台の人曰く「東北のニューヨーク」らしいが、車をちょっと走らせれば、川遊びやキャンプが楽しめる自然満喫スポットがたくさんある。東北での初めての冬が終わりを迎えるころ、近場にキャンプにでかけた。凍てつく寒さの中、火をおこし、食事を作る。冷えた身体を温めに熱い温泉に身を沈める。流れる川の音を聞きながら眠りにつく。それが最高に楽しくて、気分がよかった。帰り道、山並みを眺めながら思った。「子供が小さいうちは、東京に帰りたくないな」。

その時、やっと身も心も、仙台盤での人生ゲームを楽しめる状態になり、私の駒は一気に10マスほど進んだように思う。それから、「月に一度はキャンプに行こう」と心に決めて、自然の中に出掛けるようになると、「東京にはもう戻れない」という気持ちがますます強くなった。

足立盤が人とのつながりを育むことがテーマであったのなら、仙台盤は、自然とのつながりを育むことがテーマであるのかもしれない。またひょいと空から手が伸びてきて、別のゲーム盤に移されるのは、早くて3年後。次のテーマを存分に楽しめるように、しっかりと仙台盤で駒を進めて行くことに決めた。

ゆっか

2018年に夫の転勤で、突然始まった仙台暮らし。せっかく暮らすのであれば、東北を満喫しよう! とあちこちおでかけしています。趣味はゆるキャンプ。火とじっくり対峙する時間が好きだから。

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